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東京15区補選注目の「選挙妨害」に苦しんだ安倍氏 ヤジ排除は「表現の自由侵害」判決も

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安倍晋三首相(当時)の東京都議選の街頭演説の直前に「安倍やめろ」の横断幕を広げるグループ=平成29年7月1日午後、JR秋葉原駅前

衆院東京15区補欠選挙(28日投開票)で、他の候補者が演説する会場などに諸派新人の根本良輔氏(29)が押し掛けて大声を挙げるといった行為を巡り、「選挙が成り立たない」(日本維新の会陣営)と与野党が問題視する事態になっている。近年の選挙を振り返ると執拗(しつよう)なヤジや罵声など妨害行為に悩まされ続けたのが安倍晋三元首相だった。

岸田首相も問題視

「政策を訴えるのではなく、とにかく候補者の演説を大音量で妨害、威嚇、恫喝(どうかつ)する行為が続いている。演説を聞く有権者の権利を奪うことになる。首相の演説でもこんなことがあってはならない」

衆院予算委員会で答弁に臨む岸田文雄首相=22日午後、国会(春名中撮影)

国民民主党の田中健衆院議員は22日の衆院予算委員会で、衆院東京15区で妨害行為が問題となっているとして、こう訴えた。田中氏は「妨害行為をユーチューブやSNSで拡散して炎上させて、大きな利益としている」とも指摘した。

岸田文雄首相も「問題意識を共有する」と述べ、対策を立てる必要性に言及した。

近年選挙活動に対する妨害活動は過激化する傾向にある。

「こんな人たち」に負けない

平成29年7月1日、東京都議選を巡りJR秋葉原駅前で行われた自民党の最終演説会場には、安倍政権に批判的なプラカードなどを掲げた人々も集まって巨大な横断幕を掲げた。安倍氏が登壇すると「帰れ」コールが始まり、演説の声をかき消すようにトーンをあげていく。

「安倍ヤメロ」「安倍ヤメロ」「安倍ヤメロ」「安倍ヤメロ」

安倍氏は「あのように主張を訴える場所に来て、演説の邪魔をするような行為を私たち自民党は絶対にしない」と演説し、「相手を誹謗(ひぼう)中傷しても何も生まれない。こんな人たちに私たちは負けるわけにはいかない。都政を任せるわけにはいかない」と声を張った。

当時自民党は選挙妨害を警戒し、都議選に関して計4回行った安倍氏の演説で、3回は会場の統制が比較的効きやすい小学校体育館を選んだ。街頭の会場は秋葉原の1回だった。

この安倍氏の演説は「異論に不寛容で批判を敵視する姿勢」(朝日新聞)などと報じられた。

警察官の行為は「妥当」認定

令和元年7月の参院選。自民党は演説を妨害する人々への対策で、安倍氏の遊説日程の公表を控える傾向にあった。それでも最終日の秋葉原での演説会場には「安倍ヤメロ」と大書された横断幕を掲げて騒ぐ集団がまたしても現れた。「安倍ヤメロ」と騒ぎ出し、警察官が止めに入ると「暴力反対」コールが起きた。「表現の自由を守れ」といった叫び声もあった。

また、札幌市で行った街頭演説では「安倍ヤメロ」とヤジを飛ばした聴衆が北海道警の警察官によって現場から引き離された。当時、警察の行為は問題視された。旧国民民主党の玉木雄一郎代表は「文句を言う人を権力を使って排除することが当たり前になれば怖くて声を上げられなくなる」と批判した。

北海道警やじ排除訴訟の控訴審判決で札幌高裁判決を批判する原告ら(坂本隆浩撮影)

警察官らに後方に移動させられた男女2人は、その後、道に慰謝料など損害賠償を求め、訴訟を起こした。

札幌地裁は令和4年3月、判決で排除行為は憲法で保障される表現の自由を侵害したと指摘し、排除の違法性を認め、道に賠償を命じた。

札幌高裁は男性が周囲から暴行を受ける危険や、安倍氏に危害を加える恐れがあったとして、警察官の行為は妥当と認定。1審札幌地裁の賠償命令を取り消した。原告の男性は判決を不服として上告している。

2度の襲撃事件が発生

令和4年7月8日、安倍氏は奈良市で参院選の応援演説中、山上徹也被告=殺人罪などで起訴=に銃撃され、死去した。一方、山上被告は公職選挙法違反罪での起訴が見送られた。選挙妨害の意図の立証が困難と判断されたとみられる。

5年4月、岸田首相も和歌山市で衆院補選の応援に駆け付けた際、木村隆二被告=殺人未遂罪などで起訴=に襲撃された。木村被告は不特定多数への被害が想定されるパイプ爆弾を使ったことから選挙妨害の意図が推認できると判断され、公選法違反罪でも起訴されている。

安倍晋三元首相の銃撃現場に花束を手向け、手を合わせる女性=奈良市(彦野公太朗撮影)

平成29年10月の衆院選を巡って、安倍氏が立候補した山口4区では一部候補がツイッター(当時)にこう投稿し、波紋を広げた。

「一人でも多く山口4区に来て、安倍あきえを取り囲みましょう! 盛り上がれば本当に安倍のクビが取れます!」

自民党総裁として全国を駆け回る安倍氏に代わって、地元・山口で安倍氏への投票を呼びかけるのが妻、昭恵氏。安倍氏の陣営は昭恵氏に危険が及びかねないとして警察に警備を相談する事態となった。

このツイッターを投稿した政治団体代表、黒川敦彦氏は加計学園の獣医学部開設を問題視し、山口4区に出馬した。安倍氏との合同演説会の開催も要請した。黒川氏は今回、衆院東京15区補選に出馬した根本氏の陣営に加わっている。

衆院東京15区補選は他に諸派新人の福永活也氏(43)▽無所属新人の乙武洋匡氏(48)=国民民主推薦=▽参政党新人の吉川里奈氏(36)▽無所属元職の秋元司氏(52)▽日本維新の会新人の金沢結衣氏(33)=教育推薦=▽立憲民主党新人の酒井菜摘氏(37)▽諸派新人の飯山陽氏(48)▽無所属新人の須藤元気氏(46)─が出馬している。(奥原慎平)

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