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フジコさんと出会い、予想しない人生始まった…ノリ漁師男性は訃報に「繊細な音色に一歩でも近づきたい」

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北九州市でのコンサートの際、楽屋でヘミングさん(右)と記念写真に納まる徳永さん(徳永さん提供)

 リストの難曲「ラ・カンパネラ」の演奏で知られるフジコ・ヘミングさんの訃報が伝わった2日、ヘミングさんとゆかりがある佐賀県内の関係者の間にも悲しみが広がった。(鹿子木清照)

 「フジコさんとの出会いがあり、50歳を過ぎて予想もしなかった人生が始まった」。佐賀市川副町のノリ漁師徳永義昭さん(63)はこう振り返る。

 約10年前、ヘミングさんが弾くピアノの音に感動し、鍵盤に向かった。2021年4月、北九州市でのコンサートに前座で出演し、楽屋で「良かったよ。九州でコンサートをするときは、また演奏して」と頼まれた。

 そして22年4月、佐賀市文化会館で開いたソロコンサートにも出演させてくれた。その喜びを徳永さんは「大勢の観客の前でスピーチする時間をもらい、心配りがうれしかった」と心に刻んでいる。

 「ラ・カンパネラ」の冒頭、遠くから小さく響くピアノの音が少しずつ大きくなってくる。「フジコさんのように繊細な音を出したいが、私のレベルではまだまだ無理。自分を追い込んで一歩でも近づきたい」。それがヘミングさんへの恩返しだと信じている。

 ノリ養殖に打ち込みながらピアノに向かい、最後まで弾けるまで成長する徳永さんの姿は、今秋に公開が予定されている映画「ら・かんぱねら」のモデルにもなった。監督の鈴木一美さん(68)は「ヘミングさんの惜別の映画になってしまった」と言う。「今は編集作業を進めている。完成披露試写会にヘミングさんを招待したかった。本当に残念だ」と死を惜しんだ。

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