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画像提供, Getty Images 2024年5月2日 アメリカの麻薬取締局(DEA)が大麻の規制を緩和する方針であることが、このほど明らかになった。 大麻は現在、連邦レベルでは、ヘロインや合成麻薬LSDと同じ「スケジュール1」に分類されている。 DEAはこれを、依存の可能性がより低いとされる「スケジュール3」に変更する方針だ。 実行されれば、アメリカの麻薬政策としては、過去50年以上で最大の転換となる。 米司法省は、4月30日にホワイトハウスの行政管理予算局(OMB)に対し、分類の変更を提案したことを、声明で認めた。 この提案が連邦官報に掲載されると、パブリックコメントの募集が開始される。その後、行政審判官の審査を経て、正式に変更が公表される。 大麻は連邦レベルでは違法だが、50州のうち34州が医療目的での利用を、24州が娯楽目的での利用を合法化している。 今回の発表を受け、アメリカの大麻産業企業の株価は15~67%急騰した。カナダの同種の企業も大幅な上昇を見せた。スケジュール1とスケジュール3の違いは
アメリカでは1971年以来、大麻は規制物質法のスケジュール1に分類されている。連邦政府の視点では、「医療用途での利用は認められず、乱用の可能性が高い」とされている。
一方のスケジュール3は、DEAの定義によると、「身体的・心理的乱用の可能性が中程度から低程度」の薬物が対象となっている。麻酔薬のケタミン、咳止めや鎮痛に用いられるコデイン、たんぱく質同化作用を持つステロイドなどがこれに含まれる。
ただ、スケジュール3の薬物も規制の対象となっている。無許可の取引は、罰則は軽くなったものの、連邦刑事訴追の対象となる可能性がある。
規制が緩和されれば、現実では、巨大な闇市場が弱体化する可能性もある。大麻の合法的な販売が規制され、課税対象となっている地域にも、こうした闇市場が存在し続けている。
薬物利用・乱用に詳しい心理学者・脳神経学者のカール・ハート博士(米コロンビア大学)は、「薬物を合法化すれば、かなり多くの人が合法市場に向かうようになる。その方が簡単だし、人々は闇市場にアクセスできないからだ。違法市場は確実に弱体化する」と述べた。
また最終的には、すでに減少傾向にあるアメリカでの大麻絡みの逮捕件数がさらに減るとみられている。
「これは非常に重要なことだ」とハート博士は指摘する。
「大麻での逮捕は、以前は年間100万件を優に超えていたが、さまざまな州での合法化により、その数は劇的に減った。今回の動きはそれをさらに押し下げるだろう」
「つまり、法執行機関と接触する人が減る」、「多くの人は大麻をきっかけに、刑事司法制度と関わりをもつようになっている」と、ハート博士は付け加えた。
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画像説明, アメリカでは多くの成人が大麻の合法化を支持しているしかしここ数年、アメリカにおける大麻での逮捕の圧倒的多数が、連邦レベルではなく州レベルで行われている。フロリダ州やジョージア州などいくつかの州では、大麻はまだ合法化されていない。
元連邦検察官で、現在はオハイオ州ケース・ウエスタン・リザーヴ大学で講師を務めているケヴィン・マクムニガル氏は、連邦レベルでの規制緩和は州レベルへ「波及効果」をもたらすだろうと語った。
「分類の変更には象徴的なインパクトがある。州議会議員たちもこれについて考え始めるかもしれない。かつては、連邦政府が重大な犯罪としている以上、州が規制緩和を行うのは非常に厳しいと考えられていた」
さらに、大麻の医療効果に関する政府公認の臨床研究が容易になる可能性もある。
業界団体からは、大麻産業における事業者の税負担が軽減される可能性も示唆されている。
大麻の分類変更の動きは、大麻の使用をめぐって世論と社会の受容が大きく変化するなかで生じている。
調査会社ギャラップが昨年行った世論調査では、アメリカの成人の70%が大麻の合法化を支持していた。2000年にはわずか30%だった。
ハート博士は、「世間の受け取り方がすべてだ」と話す。「人々が何で逮捕されるかは、現実ではなく、世論が決めている」。
バイデン大統領は昨年、「大麻所持の犯罪歴は雇用や住宅、教育の機会にも無用な障害をもたらしている」、「大麻に対する誤ったアプローチのせいで、あまりにも多くの人生が狂ってしまった。今こそこの過ちを正すときだ」と述べていた。
先週には民主党議員21人が、DEAとメリック・ガーランド司法長官に対し、大麻を規制薬物リストから完全に外し、アルコールと同じように扱うよう求める書簡を送った。
書簡は、「今こそDEAは行動を起こす時だ。今こそ、米政権が50年以上にわたって失敗してきた、人種差別的な大麻政策を解消するチャンスだ」と述べている。
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