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小幡 績 : 慶應義塾大学大学院教授
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2024/05/04 6:30
「管轄外」と言ってしまえばそれまでなのかもしれないが、日銀と為替の関係を考えてみよう(写真:ブルームバーグ)
なぜ日本銀行は為替を「無視」するのだろうか。
以下の3つの理由がある。
1つは、古い経済学を信じているから。
もう1つは、古い世界に生きているから。
3つ目は、まともすぎる専門家集団だから。
この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします)。記事の一覧はこちら
第1に、1970年代から1980年代に一世を風靡した「合理的期待形成理論」を日銀もほとんどの経済学者もいまだに信じているからだ。
不思議な理論だが、要は、将来予想が自己実現するのだが、ポイントは、すべての人が正しく予想するということは、すべての人の予想が同じであるということで、そして、すべての人がその予想に基づいて実際に行動するわけで、そうすると予想は自己実現する、ということである。
だから、人々の期待さえ動かせば、世界は思いどおりになるという(傲慢な)政策主体の見込みで(実はただの願望だが)、「期待に働きかける」という、壮大な実験、無駄である実験、無駄であるにもかかわらず大きな副作用を残す異次元緩和に賛成し、日銀はその実行を担ってきたのだ。
だが、期待は実現しない。なぜなら人々は、日々の生活においては、期待ではなく、しがらみ(現在の制約条件)によって行動するからだ。将来予想よりも、今、財布にある現金(あるいはスマートフォンにチャージされているマネー残高)、今月の給料、次のクレジットカードの支払い見込み額で決まってくる。
そのため、例えば「政府日銀がインフレにしようとしているらしい、もしかしたらそうなるかも」と思っても、実体経済における実物への消費、投資行動は少しずつ、部分的にしか修正されない。
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